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自分、霊感0。霊体験も0。だから怖い怖いといいながら、洒落怖を見てしまうのさね。

 

何年か前、当時大学生の親友のAから、奇妙な頼まれごとがあった。そう…ちょうど、こんな蒸す季節のこと。

 

「俺の母方の実家に一緒に行ってくれ」
「ボク…男の子だよ…本当にいいの?」

 

なんでも、前年20歳になるときに母親に連れて行かれた実家に、どうしても今年も行きたいとのこと。

 

ところが、母親は用事があって外せず、かといって一人もイヤだというので、高校生の頃からの付き合いだった自分にお鉢が回ってきたのだ。

 

「お前も変わってるよな。母方の実家に友達連れて行くかね」
「まぁ他にいないっつーか…全員断られたから」

 

そりゃそうだ。

 

Aの母方の実家ってのは、とある山間のちっさい村で、ドがつく田舎だった。でも、電気水道にネットまで通ってるんだけどさ。

 

列車に揺られて10時間とかそういうレベル(大半が待ち時間だけど)だったので、手持ち無沙汰ということもあって、ぽつぽつと、去年あったという話をしてくれた。

 

去年、Aは20歳になるときに必ずその村に来るようにと、かたくかたくかた~~~く母親に言われていて、心底イヤイヤついていったんだそうだ。

 

自分も見てきたけど、本当にド田舎。娯楽施設なんてありゃしない。まぁそれでも結構な家柄の母親の手前、成人した息子をお披露目に…とかそういう話なんだろなと、連れられて村に来たんだそうだ。

 

案の定、実家についてもすることなんかない。漫画なんてあるわけない。ゲーセンもなければPS2もおいてない。コンビニも山2つ越えたところにあるとかないとか、そういう世界。

 

その割に来客もないし(祖父母に挨拶したくらい)、俺何しに来たんだ?っていう感想だったそうな。

 

さすがにゴロゴロし飽きたのか、家を出てお店のある辺りまで散歩していったんだと。そこで、それは起きた。

 

駄菓子屋みたいなところに入って、声をかけたら、「もうウチは閉めるよ!帰って!」と追い出され、自販機もないし、何か飲むものをと思っても売ってくれなかった。

 

ヨソモノ嫌いにしたって程があるだろと、さすがにカチンときたA。店先にジュース出してたオバチャンに食ってかかったそうだ。

 

「なんなんすかここ!なんで売ってくれないんです?俺なんかしたっつーんですか!」と怒鳴りつけると、

 

そのオバチャンは目を合わせないどころか、顔をこっちに向けようともしない。

 

「ちょっと!」と声を荒げたところ、いきなり、

 

「ぎゃぁあああ~~!!助けて~~~~!!!○△やぁ~~~!!おとうさ~~~ん!!!」と、ものすごい声で叫び出したという。

 

すると、店の奥から木の棒(枝じゃなくて棍棒みたいな奴だったらしい)を手にした、
白髪のおっさんが飛び出してきた。それも、威嚇とかじゃなくて、思いっきり振り下ろしてくる。

 

「○△!いねや!きなや!」とかそんな感じの方言で、Aを追い払う…というか、それこそ命も狙わんばかりだったそうで、騒ぎを聞きつけた周囲の住人も、遠巻きにAを囲もうとしていたらしい。

 

あとはもう必死で山道を駆け上り、なんで?なんかしたんか俺?と自問を繰り返しながら、家に逃げ込んだそうだ。

 

「母さん!なんなんここ!マジヤバイって!マジで!」と、来客中にもかかわらず母親に詰め寄ったA。

 

ところが、Aのお母さんは何も言わずに下を向いてしまったらしい。

 

「おー。大きなったなあ、お寺さんおぼえとるか?」と、母親の向かいに座っていた住職が声をかけてきた。たぶん自分が小さい頃に挨拶した人なんだろうなと、記憶にないので、ああ、はい、とかそんな返事をして、Aは改めて母親に今あったことを説明し出した。

 

すると住職は

 

「覚えとらんか。覚えとらんのか。そうか…。覚えとらんそうや、どうするや」と、Aの母親に尋ねた。母親は困りきった表情で、返事が出来なかったそうだ。

 

少しの間、沈黙があったあと、住職が口を開いて言った。
「わしが(話を)しよし」

 

話はさかのぼって、Aが生まれてすぐの頃。

 

母親の産後の休養もかねて実家でのんびりしつつ、Aを自然の中で育てたいという両親の希望で、Aと母親は村に戻ってきたという。父親は単身赴任。

 

その周辺ではいいとこの家だったそうで、毎日ひっきりなしにAを見に来る人で、ちっとものんびりできなかったとか。

 

それでも、Aの母方の祖父母は娘自慢に孫自慢で、近隣にふれて回るような喜びようだったそうな。

 

そうしたある日、高名なお坊さん(前述の住職のお師匠さんです。便宜上お師匠さんとします)が、Aの祖父母と付き合いがあったので、孫の顔を拝みに来たという。
母親がAをだっこしたまま、お師匠さんに顔を見せてやろうとしたとき、

 

「○△××□○□!」と、誰かがお師匠さんを口汚く罵ったんだそうだ。

 

Aの母親は、まさか両腕の中にいる赤ちゃんが言ったとは思わなかったんだろう。なおも罵声は止まない。

 

とたんにお師匠さんが仁王様のような形相に変わっていき、この辺で罵声の主が赤ちゃんだと、周囲の人も気がついたという。

 

Aの母親は事態が飲み込めず、凍りついたように立ち尽くし、お師匠さんはダラダラと滝のような汗を流していたそうだ。

 

「○△や!」

 

誰かがそう叫ぶと、あっという間に家は大狂乱。訪問客は履物もそのままに、逃げ出してしまったらしい。

 

その日の夜、祖父母と母親、お師匠さんが真っ青な顔で相談していたところに、すこしはなれた村にいた住職が呼び出されて来た。

 

そのときは、Aの家(家っつーかお屋敷級でしたが)を松明をもった住民が取り囲んで、それこそ今にも焼き討ちをせんばかりだったそうな。

 

恐ろしいことに、どうやら祖父母と母親はAを…Aの命を奪う方法について話をしていたらしい。それをお師匠さんが「絶対にさせん!」と、頑として折れなかったという。

 

「やってみよしな」(やるだけやってみようよ、みたいな意味らしい)

 

そう言ってお師匠さんはAを預かって、お寺で育て始めたそうだ。詳しい話は聞きそびれたんだけど、3つか4つのお寺で持ち回りみたいな感じで、預けられては次に、っていう仕組みだったらしい。

 

何年かはそう大きなことは起きなかったらしく、Aが12歳くらいまではお寺にずっといたそうなんだけど、もう結構なお歳だったお師匠さんは、亡くなってしまったんだそうだ。

 

お師匠さんのおかげでなんとかやっていたお寺の協力も、いなくなったとたんに、お互い厄介ものの押し付け合いで、どうにもならなくなってしまったらしく、

 

かといって住職もどうしようもなく、結局親元に帰すことになったという。

 

「そのときはえらく無責任だった」と詫びてくれたそうだけど、同時に「自分ではどうもできんかった」とも言っていたそうだ。

 

○△とかっていうのは、この地方に伝わる『よくないもの』の呼び名らしくて、定まった名前があるわけじゃないんだけど、『そういうもの』に対してつかうものらしい。

 

○△は口に出してはいけない。(Aは『アレ』とか、『そういうの』とかで表現してた)憑かれるらしい。

 

住職に事情を聞いて、Aはいくらか混乱しながらも落ち着いたらしく、

 

「なんで20歳になったらここに連れて来いなわけ?」と、質問をしてみた。すると、それは亡くなったお師匠さんの遺言だったらしい。

 

「もし20歳までAが○△でなかったら、もう大丈夫だ」と。(その判断はどうやるのかは分からないけど)

 

「その代わり、○△だったら、石で頭を割って命を奪え」とも遺していたんだそうだ。
それほど恐ろしいものだったらしい。

 

住職はそこまで話してから、Aにニッコリと微笑むと、「もう大丈夫やし」と言ったという。

 

自分とAは村に着くと、実家ではなく、まずお寺に向かった。ハッキリいってボロいお寺だったけど、なぜか塀に沿って石の玉がゴロゴロ並んでる。

 

それも1個2個じゃなくて、何十個っていう数。なのに、どれも砕けてたり、真っ二つだったり。

 

ちょうど自分らは、愛車のカブに乗って住職が帰ってきたところに居合わせ、住職はニコニコ笑ってヘルメットを脱ぐと、手招きで来い来いとやってみせた。

 

「あの、ご住職。この玉ってなんなんですか?」

 

門をくぐって敷地内に入っても、砕けた玉はそこらじゅうに置いてあり、気になってたずねてみた。

 

「ああ、それは『ぼん』や。(ぼん=坊ずの意。つまりAのことね)
○△がぼんを殺そうとしとったんやし。お代わりやな」

 

縁側に腰掛けて、住職が続けた。

 

「●●さん(お師匠さんのこと)は、ぼんのお代わりさんが足りんで、何から何までお代わりさんにしたんやし。

 

わしのベンツ(愛車カブのことらしい)もお代わりさんにされそうやったし」

 

カラカラと笑ったが、ふと真顔になって、
「●●さんはな…そうやな…」
そこまで言うと、スタスタと奥に入って行き、程なくしてなにやら包みを持って戻ってきた。

 

「●●さんや」
包みを解くと、真っ二つに割れた漆塗りの位牌が出てきた。

 

「…なんで俺にそこまでしてくれたんすかねぇ…」

 

無理やり力で割ったような、不自然な割れ方をした位牌を見ながら、Aがつぶやいた。

 

しばらく誰も口を開かなかったけど、日が傾き始めた頃に、Aが持ってきたお酒とお土産を置いて、お寺を出る事を告げた。

 

「大事にしよし」
住職はそう言って見送ってくれて、自分らはAの実家へ向かった。

 

「なぁ、○△ってなにがダメなん?」
帰り道でAに聞いてみた。

 

「○△はな、人が不幸になるだけなんよ。○△本人が周りを巻き込んで、どんどん不幸にしていくんだ。

 

なんなのかはよくわからん。昔は結構あったらしい。○△がいるだけで不幸になる。何しても人が病気になる、命を落とす、家が没落する、作物が取れない、家畜が死ぬ。だから殺さないといけなかったらしい」

 

しかも、殺すときは、聞いてるだけで晩飯が食べられなくなるほどの内容で殺されるらしい。

 

「この時代にそんなアナクロな、なぁ?」

 

そう言ってAは笑った。

 

後々聞いた話によると、Aが○△でなくなったという理由はいろいろあったらしい。お師匠さんの遺言で、『お代わりさん』だけは欠かさなかったのが、ある日突然『お代わりさん』が壊れなくなったんだそうだ。それで大丈夫、ってなったらしい。

引用元:超厳選怖い話ランキング

 

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