eye

306: 1 2006/08/06(日) 23:13:23 ID:SFhrBsAI0
俺の祖父の体験談を一つ。
当時祖父が住んでいたのはお約束っちゃーお約束だけど、へんぴな山麓の農村だった。
住んでる人が少ない上にその村から外に出る事も無いから村一つで1個の大きな家族みたいな感じだったんだな。
そこで当時小学生だった祖父は肝試しとか鬼ごっことかして育っていった。
そんなある日、祖父の親友(以下「甲」とする)の家に新しく弟か妹ができるみたいな話をその甲から聞いたらしい。祖父も喜んでまた「家族」が増える、心の底から祝ってやった。
甲の話だともう弟の場合も妹の場合も名前は決まってるらしい、親にその名前の由来を聞いたら「大きなしあわせを作るように」とかのもっともらしい事を言われた後に「ずーっと前から決まってたんじゃあ」みたいな事を言われたらしい。
当時の祖父はよくその意味がわからなかったらしいが、なんとなく幸せそうな雰囲気だって事は分かったらしくてただただ笑っていたらしい。
そんで甲に下の子ができるって事が周知の事実になったある日、甲が祖父とその親友(以下「乙」とする)に神妙な顔で相談を持ちかけてきたらしい。
どういう事か、というと、父ちゃんが毎晩遅くに何処かにフラフラ歩いてってしまう、いくら聞いてもどこに行くのか教えてくれないしすごく遅くに帰ってくる事もある。
という内容だった。祖父と乙は「お産が迫って色々忙しいんだろう」みたいな事を言ったが、甲は必死な顔つきで泣きそうになりながらも
「違う、なんだか行って帰ってくる時の父ちゃんは怖い、なんだかわからないけど凄く不気味なんだ。他の大人に話しても取り合ってくれないし。」と主張する。
事態はわかったけどどうした物か、祖父と甲が頭をひねらせていると乙が突然思いついた様に言い出した。

307: 2 2006/08/06(日) 23:14:26 ID:SFhrBsAI0
「それなら夜俺らで集まって甲の父ちゃんの後についてったらいいじゃん!」
みたいな事を言ったらしい。甲も祖父も「えっ・・・」って感じだったらしい。夜に出歩くという事もさる事ながら、なんだか不気味な雰囲気が漂う提案である。
甲が返事にこまっていると、乙が
「なんだ、怖いんか?今度お兄ちゃんになるんだろ?」
という風に「兄」というワードをちらつかせる。すると甲はすぐに、「わかった!行きゃええんだろ!」と了承したらしい。こうなると祖父もしぶしぶ参加せざるを得ない。
待ち合わせ場所を決めて、深夜。
乙は祖父の家に、甲と祖父は乙の家に泊まりに行くと嘘をついて甲の家の前に集まった。
しばらく三人が物陰から様子をうかがっていると、なるほど、甲の父がフラフラと何処かへ誘われていく。すぐに三人は後ろに続きだした。

真夜中、月の他に灯りもない道をフラフラと歩く甲の父、だんだん民家もまばらになり、やがて闇と無音が辺りを包んだ。甲はもう泣きかけで必死に祖父にしがみ付いて歩いている。
「いつまで歩くんだ、俺らは家に無事に帰れるのだろうか」
そんな考えがだんだん濃くなり、祖父がとうとう「帰ろうや」と言おうとした時。
乙が小声で「隠れろ!」と叫んだ。
一番視力の良い乙に言わせると、甲の父は雑木林の中の物置のような小屋に入っていったらしい。
三人は岩陰から物置を見守る。すぐに甲の父は物置から出てきて、またフラフラと帰途を辿っていった。
甲の父が完全に見えなくなったのを確認すると乙が立ち上がり、「よっしゃ、帰り道は覚えた。川二回渡って右だ」と言いながら持参した油と布切れとそこいらの枯葉を枝に巻きつけて「小型たいまつ」みたいな物を作った。
それに着火するとなかなか辺りは明るくなる。甲はいくぶん安心したようだ。
祖父も暗闇から開放されて安堵していると、すぐに乙が言った。
「ほれ、早くあの小屋覗くぞ。これすぐに火ぃ消えちまうから」
祖父も甲もその一言に相当びっくりして、首を横に振る。乙の神経が信じられなかった、という。
しかし乙はまた「お兄ちゃんがそんな弱虫だと、下の子はかわいそうだな」みたいな事を言って甲を挑発する。
仕方なく甲も祖父も建物に入ることにした。
古い木材でできている。軋む扉を開けて、中に入る。

引用元:怖い話クラブ

この記事を読んだひとは、こちらも読んでいます