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去年の夏釣りに行った時の話。

夜、釣り場について、明け方に釣りを開始する予定だったのでテントを張って寝ることにした。

そこは切り立った崖に覆われてる場所で、地元民でもめったに来ないらしい。
しかし大物が釣れるとのことで、たまに人に遭遇することもあった。
その日は週末にも関わらず誰もいなかったので貸切状態だと喜んでいた。

テントを張って、飯の用意してプチキャンプを堪能したあと、ぼちぼち寝るかと寝袋に潜り込んだ。
もう完全に熟睡していたのだが、もの凄い音と衝撃で目が覚めた。

寝起きで何が起きたのか全く分からない。
音はしないもののテントはまだゆさゆさしてる。
時計を見ると二時すぎくらい。
頭がようやく覚醒してきて冷静に考えられるようになった。

俺はたまに金縛りに遭うから、もしかしたら金縛りの幻聴じゃないかと考えたが、あまりにリアルすぎた。
それに寝てから金縛りになったことはない。

もう一つの可能性は落石だった。
崖は岩状ではなくて、土の固まったような表面だったから落石はないだろうと、たかをくくっていたが、ありえないことではなかった。

こんな時間に人間が来るとは思えないし、一人で真っ暗闇にいる時にあまり怖いことは考えたくなかったから他の可能性は否定させてもらった。

恐怖で眠れそうにもないので電気をつけると少し気持ちが軽くなったが、外に出て確かめる気力はなかった。

どうせもうすぐ明るくなるから日が出たら釣りの準備でも始めるか、とか考えていたら外から何か聞こえてくる。

よくよく耳をすますと「うう・・・う・・」って感じで誰かがうめいている。
恐怖で卒倒しそうになった反面、あきらかな人間の声を聞いて、何か事故でもあったのか、とちょっと現実的な考えがわいてきた。

心配になってテントから出ようとすると、物音と共にテントの布に人間の影のようなものが・・・。

やっぱり誰かいる!

そう確信し、懐中電灯と防御用の鍋を装備してテントのジッパーを開けて、身を乗り出して辺りを見回した。

・・・誰もいない。

はるか遠くにイカ釣り漁船が光ってるのが見えたくらいだった。
ちょっと先も見えないほどの闇と、静まりかえった空気でまた恐怖心が呼び戻され、テントに引っ込んだ。

今考えればテントは内側から照らしてるんだから外にいる人間の影なんて映るはずがないんだよな。

これは絶対におかしいと思って、テントの中でガタガタ震えながら、こういう時用のラジオを聞いてた。

しばらくしてラジオDJがトークかなんかしてる時に、今度は夢でも幻覚でもなくテントの上部が地面に衝突するとともに轟音が響いた。

テントの端っこにいた俺にもダメージを与えるくらいの衝撃だった。
もう完全に訳がわからなくなった俺は泣いた。
泣きながら日が出たら釣りしないで帰ろうと誓った。

外からまたうめき声と、はいずるような音が聞こえてきて、ラジオの音量を最大にして、やりすごした。

その日の日の出はまるで神のように見えたな。
しかし太陽は見たくないものも照らすもんだ。

外に出て周りを見回すと、缶ビールやらビンやら花が散らばってた。
そそくさと畳んだテントの下にはわずかに血のあとがこびりついていたよ。

上はたしか道路になってたはずだから、気になって帰り際によってみたらやっぱり誰かが亡くなった後のアレがあった。

関係ない俺が冥福を祈るのはどうかと思ったけど、一応残りのジュースを置いて手を合わせてきました。

引用元:鵺速あなたの傍の怖い話

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