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274: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2013/07/20(土) 23:35:37.00 ID:L3hbmMFa0
山仲間の話。

山歩きの途中で休憩していると、唐突に花の香りに包まれた。
様々な野花の匂いが混じっているようで、何の花かは特定出来ない。
見回してみたが、辺りには花など一輪も咲いていなかった。

後で山に詳しい者に聞いたところ、「サニャツキに出会したのだろう」と言われた。
サニャツキとは『山野憑き』が訛った語らしく、取り憑いた者の周囲に野花の香りを
漂わせる物の怪なのだという。
「花の香りを振りまくだけで、他に害はないというから、何も心配しなくていいよ。
ただこいつ、気に入った人間に憑くというから、しばらく付きまとわれるかも」

確かに下山後、街中の自宅にいる時にも、いきなり花の香りが部屋に充満することが
あったという。
「一月くらいでなくなったけど、爽やかだし悪いものじゃなかった。
ただトイレの中で香りが爆発した時は、我慢できずに笑ってしまったよ。
凄く豪華な芳香剤だったなぁ」
そう言って彼は苦笑した。

275: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2013/07/20(土) 23:35:38.00 ID:L3hbmMFa0
知り合いの話。

山中を軽トラで流していると、行く手に襤褸切れのような物が落ちている。
毛布のようだ。どこかの作業車から落ちた物だろうか。
片そうと路肩に停車し、車を降りた。

近よってみると、何となく布ではないような印象。少し生臭い。
「……あ、ペチャンコになった動物の轢死体か?」
そう考えながら傍にしゃがみ込んだ途端、襤褸はムクリと起き上がった。
下になっていた側から、犬のものらしき口が剥き出しにされて迫ってくる。
欠けた牙の間から、紫色の舌がだらしなく垂れていた。
顎から上は削ぎ落とされたかのように失くなっている

思わず飛び退ると、起き上がった時と同様、唐突にそれはペシャリと潰れた。
先ほどの印象も幻のように掻き消え、もうどこをどう見ても、古びてほつれた
毛布にしか見えなくなっていた。
恐る恐る持ち上げると、間違いなく確かに古毛布だ。
先ほど見た口は何だったのか。いくら考えても答えは出なかった。

後日、近所の老人から「それはカブソだろう」と教えられた。
正体は皆目不明だが、昔からあの山に出て人を化かすモノであるらしい。

「化かされたって話はよく聞くけど、実際にやられると本当にビビルぞ」
彼はそう力説していた。

276: 雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ 2013/07/20(土) 23:35:39.00 ID:L3hbmMFa0
友人の話。

子供の頃、毎年夏になると、家族で山奥の避暑地に逗留していたという。
涼しくて彼のお気に入りな過ごし方だったのだが、一つだけ気になることがあった。

毎朝毎朝、誰もいない筈の森の奥から、ラジオ体操の音楽が流れてくる。
その森は道など付いておらず、下生えを分けて足を踏み入れるのも大変な場所だった。
両親に聞いてみたが、
「物好きな誰かが森で体操しているんだろう」程度にしか考えていない様子。

正体を明らかにしてやろうと、苦労しながら森の奥へ足を運んでみたところ、
どれだけ歩いても音源には近寄れない。
それどころか、まるで彼から逃げているかのように、段々と小さくなっていく。
結局、何処で誰が体操しているのかを知ることは適わなかったそうだ。

現在、彼の家はその別荘を手放しているという。
「ラジオ体操の歌、今でもあの森で流れているのかなぁ」
懐かしそうに目を細めながら、彼はそう言っていた。

引用元:見ちゃダメ!

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