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大学生の時の話。
夏の終わり頃、一人暮らししていた東京から岐阜のばあちゃん家に遊びに行った。
昔からばあちゃんじいちゃん子で、両親は横浜だがそっちにはあまり行かず岐阜にばかり行っていた。

そのばあちゃんから滞在中に興味深い話を聞いた。
岐阜は山が多いが、ばあちゃん家から車で数分行ったところの、山菜がよく採れる山に、神様がいるという。
山の神にありがちな酒好きで、じいさんが子供の頃ふざけて酒をお供えしてみたら、次の日には綺麗に徳利の中身が消えていた、なんてことを面白おかしく語ってくれた。
ばあちゃんも半分信じてはいない感じだったが、俺はとても面白いと思った。
東京に帰る前日の朝、山岳部だったのもありその山を登ることにした。
俺はその頃、大学の周りの友達が、やれ学会発表だ、ボランティア活動だと、色々とやっているのを見て、危機感を感じていた。
なので俺も何でもいいからやったれという感じで、神頼み的なノリで行ったんだと思う。
朝、ばあちゃん達には温泉に行くと嘘をついて小づかいを貰い、車を借りて意気揚々と出かけた。
窓を開けて田舎道を走っていると、田舎特有の緑の匂いと澄んだ空気が気持ちよかった。
途中コンビニで食料を買った。
酒は日本酒とサワーなど、つまみも干し鮭など十種類以上は買った。
目的の山は、6・7百メートルほどの低い山だった。
舗装道路があったからしばらく車で登っていった。
道路の横にちょうど空き地が有るところに車を停めて、そこからは徒歩で行こうと思った。
熊が怖かったので車にあった熊除けスプレーとかも持っていった。
神様を探しには来たが、まぁ会えたらラッキー的な感じで、山の中で気持ちよく昼メシ食って、その後本当に温泉に行こうか、と思いテキトーに獣道を登った。
しばらく登ったところで、木の根っこに腰掛けて昼メシを食った。
昼メシを食っていると、背中に異様な視線を感じた。
振り向くと小鳥がいた。
なんだ、と思って、おにぎりのかけらを投げてやると、トトトっと後ずさりして食べようとしない。
でまたこっちをじーっと見てる。
これはまさか、と思って小鳥を追いかけると、本当に道を先導し始めた。
チョンチョンと跳ねて、俺が付いてきてるか確認する。
見失うまいと付いていくと、急に視界が開けた。
低い山によくある人工の平地かと思ったが、ちょっと妙な感じがした。
下草は青々としてるし、平地の周りは綺麗な若木が何本も立っていて、平地の上空は高い杉やマツの枝葉が天井を作っていた。
まるで誰かが天然のリビングルームを作ったみたいだった。
気がつくとその若木の間から人が覗いていた。
俺が固まっていると、どんどんこっちに歩いてくる。
ヤバいと思いながらも、よく見てみると、背格好は俺より年下で女か男か分からないが、単純に美しい、と思った。
その人は俺の横に来ると、俺のリュックを指した。
反射的に中身を開けて、酒を取り出すとその「神様」はとても嬉しそうな顔をした。
それから俺は少し気を失っていた。
気がついたら酒はほぼなくなって、つまみも、俺が全て袋を開けた記憶はあるが、綺麗に食べられてた。
ただ、何故だか分からない今まで感じた事のないものすごい幸福感と、木漏れ日の暖かさと、「神様」の黒茶で日に当たると赤く透けていた綺麗な髪が印象に残っていた。
ぼーっとしていると、急に山の寒気を感じ、早く下山しなければと思い急いでゴミをまとめて下りた。
帰り道が分からないぞと焦ったが、少し下るとすんなり昼メシを食った場所に戻れた。
車に戻ると夕方だった。
呆然としたままばあちゃん家に戻ると、泥だらけなので驚かれた。
その日の夜、風呂に入る時にポケットから石ころが出てきた。
丸いつるつるの石だが、色は何の変哲もない、ただの石。
そこで記憶がフラッシュバックした。
俺が気を失う前、「神様」は丸い石を2つ差し出してきた。
一つはポケットに入っていたもの、もう一つは宝石の様な石だった。オパールみたいで、太陽の光を吸収してキラキラ輝いて、とても綺麗だった。
俺はとっさに普通の方を選んだ。
直感で、来たときから違和感があった、平地を囲む綺麗な若木が元は人間だったんじゃないかと、なぜか感じた。
神様はそれを見て、ただ一つ頷いて帰って行った。
夢だったのか分からない体験だった。
社会人になった今も、その石は今でも大切に保管している。
東京に帰ると、運動部なのに痩せ型だからか喘息もちだったのが治っていた。
今は大学院で忙しく岐阜には行けないが、いつかまたあの山に行ってみたい気はする。
以上で話は終わりです。
怖くはなくオカルトですみませんでした。

引用元:オカ学

 

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